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日別アーカイブ: 2018年10月11日

ワーウォマンスリーレポート ’18. Sep. 第2号

ごあいさつ

9月に入り、少しは暑さが衰えるか?と期待していましたが、まだまだのようです。
これからは季節の変わり目になりますので、皆様体調管理には十分に気を付けてください。
WahW Monthly Report(ワーウォ マンスリー レポートWMR)第2号では、「塩素の基礎知識」の続きをご紹介します。専門的な内容になりますが、大切な情報ですので、ぜひともご覧ください。
よろしくお願いいたします。

次亜塩素酸を理解する3つのキーワード

1)   細胞を攻撃するメカニズム

一般的に細胞の最外部の周囲には細胞壁があり、その内側に形質膜と呼ばれる生体膜があります。細胞壁は厚く丈夫な構造体ですが、イオンや低分子量の親水性分子を容易に通過させます。
これに対して、形質膜はリン脂質二重層(内部に脂肪酸の疎水性層を形成)を基本構造としており、イオンや低分子量分子の透過を妨げるのです。
そのため、イオン化したOCℓはこの形質膜にある脂質二重層を透過することができません。
一方、非解離型のHOCℓは、小さい分子サイズと電気的中性の性質から、受動拡散により容易に細胞壁と形質膜を透過します。HOCℓの濃度が高いほど殺菌効果が強まるには、受動拡散の推進力である濃度勾配を大きくしたことに起因します。
細胞の内部に進入したHOCℓは、脂質二重層や膜輸送タンパク質、細胞質に存在する酵素系(解糖、TCAサイクル)、形質膜に存在する酵素系(電子伝達系)、そして核酸(DNA、RNA)、リボソームなどの必須組織に対して酸化作用を及ぼすことになります。
その結果、OCℓと比較してHOCℓによる生細胞および芽胞の殺菌速度および効果は著しく大きくなるのです。

細胞を攻撃するメカニズム

このようなメカニズムによって殺菌作用が行われることから、耐性菌の発生が抑えられると言う報告もあります。代表的な耐性菌として知られるMRSAは、メシチリンという抗生物質に対して耐性を持った黄色ブドウ球菌のことを言い、院内感染の原因菌として深刻な状況となっています。

2)   幅広い抗菌スペクトル

微生物には、大別して、細菌(バクテリア)、酵母、カビ、放線菌、藻類、ウイルスがいます。
ここでは、抵抗性の序列を細胞の基本構造によって作成しました。

殺菌消毒剤として利用されているグルタールアルデヒドは、主に医療機器の滅菌、殺菌、消毒に用いられています。ほとんどすべての細菌、真菌、芽胞、ウイルスに有効であるとされます。
人体へは毒性が強いため使用することはできません。
医療機関においては内視鏡等の医療器具等の殺菌消毒剤として広く使用されていますが、実際に医療機関でこれを取り扱う労働者に皮膚炎等の健康障害が発生しているということで、厚生労働省から「医療機関におけるグルタルアルデヒドによる労働者の健康商売防止について」という通達がでています。
(平成17年2月24日)

抗菌スペクトル

 

3)   人類の体内でも活躍する次亜塩素酸

次亜塩素酸は、生体防御機能とも密接に関連しています。
白血球の一種である好中球は、生体内に微生物などの異物が侵入すると活性化して盛んな遊走性(アメーバ様運動)を示し、微生物に接触して貪食し(食胞の形成)、取り込んだ微生物を殺菌します。
この主たる殺菌因子が次亜塩素酸なのです。(下図を参照)

このような生体機構を見るにつけても、次亜塩素酸を殺菌操作に利用する技術は、自然の免疫機能を人為的に活用したシステムとも言えますね。(次亜塩素酸の科学より)

好中球

 

好中球の働きについて

好中球は5種類ある白血球の1種類です。盛んな遊走運動を行い、主に生体内に侵入してきた細菌や真菌類を貪食(飲み込むこと)殺菌を行うことで、感染を防ぐ役割を果たします。
末梢血内には2000~7000個/μℓの好中球が含まれ、成人の末梢血内には、体重50kgの場合80億個~300億個が存在します。生体内すべてでは、数千億個もの好中球が存在すると言われます。
血液内での寿命は1日以内、概ね10~12時間程度とされます。組織内では数日とされます。
好中球は骨髄内で生産され、1日当たり1000億個程度作られるそうです。

 (生体防御のしくみ)

生体に細菌などが感染すると、好中球は感染した炎症部位に遊走して集まり、細菌類を貪食殺菌します。

(遊走から細菌への接触)

好中球は表面に多数あるレセプターで刺激因子の濃度の濃い薄いを感じ取り、因子の喉の濃い方向に遊走し、感染巣に集結します。感染巣に到達した好中球は、細菌自身の産出物質などを感じ取り細菌へ接触するのです。

(貪食・殺菌)

感染巣に到着した好中球は、細菌類への接触から貪食を行い、飲み込んだ細菌類を殺菌します。殺菌の一つの手段が活性酸素や過酸化水素を発生させて殺菌することで、酵素のミエロペルオキシターゼは過酸化水素(H2O2)と塩素イオン(Cℓ-)から次亜塩素酸(HOCℓ)を産出し、細菌は酵素反応によって生じたHOCℓにより、効率的に殺菌されるというものです。